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なぜ近年の会計事務所の顧問料は格安になったのか?

最近はインターネット上で格安の顧問料をウリにしている会計事務所を数多く見かけるようになってきました。中には顧問料が1万円以下という事務所まであります。会計事務所に支払う顧問料が毎月数万円かかっていた時代と比較すると、随分と状況は変化してきました。しかし、あまりにも顧問料が安いと不安を感じてしまうのも事実で、単純に価格だけで判断し、安易に顧問契約をするのも・・・と考える経営者もいるでしょう。そこで今回は「会計事務所の顧問料が安い理由と、そのビジネスモデル」について、会計事務所業界の変化の波に触れながら解説していきたいと思います。


なぜ近年の会計事務所の顧問料は格安になったのか?


会計事務所の業界で起こっている競争と構造変化の波


今や会計事務所も顧問料を格安に設定する、価格競争の時代に突入したと言ってもよいでしょう。しかしどうしてこのような変化が生じたのでしょうか?一般的に会計事務所が新規顧客を獲得するためには、まず見込み客に自分たち事務所の存在を知ってもらわなくてはなりません。そしてそのための宣伝広告や広報活動を行うことになるのですが、当然どの事務所も同じことを考え、同じように行動すれば、自然と事務所間の競争も激しくなります。


いくら宣伝広告などで自分たちの会計事務所の存在を知ってもらったとしても、肝心の顧問契約が取れなければ意味はありません。そこで競合の会計事務所と差別化できるポイント、つまり「ウリ」になる部分が必要となるのです。大手や中堅の税理士法人であれば、豊富な人材によるマンパワーや、専門性をウリにして顧客を獲得する事もできるかもしれません。しかし小規模の会計事務所であれば、大手と同じようなことはできません。そのため同業者や弁護士など、関連する他の士業とのネットワークを構築し、総合的なサービスを展開している会計事務所もあります。


しかし現実的には、大手・中堅との力の差はなかなか縮まることがなく、小規模な会計事務所は全体的に苦戦している傾向です。そこで考えられたのが起業、独立開業して間もない個人事業主や経営者をターゲットに、格安顧問料をウリとした新規獲得に乗り出す動き。もっとも料金、顧問料が安いだけで、サービス内容が悪ければ、いくら顧問契約をしてもすぐに解約されてしまうでしょう。しかし、その中の一部の会計事務所については、低価格設定で顧問契約を維持し、経営を続けています。


格安顧問料の波は会計業界全体に広がりつつある


格安顧問料を設定している会計事務所で働く税理士であれば、従来の一律顧問料という常識、概念が今後は簡単に通用しないだろうという事がわかっています。なぜなら様々な業種の顧客がいて、それぞれの会社の規模も異なるわけですから、自然とサービスの内容や相談内容、顧問としての面談回数なども異なってくるからです。以前までは個々の顧客のニーズが異なるにもかかわらず、会計事務所の顧問料は一律で「顧問料月額○万円」と設定されていました。しかし、このような古いビジネス習慣を若手の税理士たちが「時代にそぐわない」として、顧客の立場に立って料金設定を行い、推し進めたのです。


もともと、格安顧問料の設定は一部の小規模会計事務所が始めたことですが、最近ではこの新しい料金体制が全国の会計事務所へと広がってきています。実際に格安顧問料をウリにして、年間100件近いペースで新規顧客を獲得している会計事務所もあります。また、同業の税理士に対して、新規顧客獲得のノウハウを提供するセミナーを開催する、強者の会計事務所もあります。


このような顧問料の低価格化の影響は、大手・中堅の会計事務所にも影響を与えており、段々と格安顧問料でサービスを提供する事務所も出てきました。またこれら大手・中堅の会計事務所の場合は、既存顧客との兼ね合いからターゲットを小さく限定し、料金の見直しを実施するところもあるようです。このような業界の状況からすると、会計業界全体で価格競争が激化しているのは間違いのない事実であるようです。


格安顧問料でも成立する、会計事務所ビジネスの裏事情とは?


では、旧来のビジネスモデルを壊し、格安顧問料でも会計事務所のビジネスが成立しているのはなぜでしょうか?会計事務所のビジネスモデルといえば安定した顧問料収入であり、これが経営上最も重要なものです。当然のことですが、顧問料を低く設定すると顧客単価はどんどんと下がってしまいます。そうなると経営が立ち行かなくなってしまうので、事務所の売上げを上げるために、新規顧客をどんどん増やさなくてはなりません。


また、新規顧客が増加すれば、サービスを提供する受け皿、つまり税理士がいなくてはなりませんので、従業員である税理士一人あたりの担当顧客数も、増やしていくことになります。とはいえ一人あたりの担当顧客数を増やしても一定の限界数があるため、新たなコストや労力を投入することになります。これらの事情から近年は、独自の運営ノウハウであったり、サービスのIT化、自動化が進められるようになってきています。会計事務所の格安顧問料モデルは、このような背景から成り立っているのです。


(寄稿者:ルパンさん)

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